認定スクラムプロダクトオーナーの研修・資格|Certified Scrum Product Owner®:(CSPO)
認定プロダクトオーナーの研修を受講し、Certified Scrum Product Owner®(CSPO®)に認定されましたので、同じ道を目指す方のご参考となるよう綴ります。
プロダクトオーナー向けの資格はいくつかあるようですが、歴史と規模で一番有名なScrum Alliance Inc.という団体の認定スクラムプロダクトオーナー(Certified Scrum Product Owner®:CSPO®)を選び、研修は odd-e Japan という会社としました。
※他にもScrum Inc.という団体の認定資格スクラムプロダクトオーナー(Licensed Scrum Product Owner:LSPO)もあります。
プロダクトオーナー(PO)はスクラムフレームワークにおける3つの役割(ロール)のうちの一つです。
スクラムチームにおいて、プロダクトオーナーとスクラムマスターはそれぞれ1人しかおらず、極めて重要な役割を担うことからしっかり学ぼうと思い、CSM(認定スクラムマスター)に続いてCSPOの研修・認定を受けることとしました。
※最後のロールは開発者(複数名)で、3つを頂点とする三角形がバランスを保つことで、スクラムが成り立ちます。
ちなみに、開発者向けには、認定スクラムデベロッパー(Certified Scrum Developer®:CSD®)があります。スクラムだけでなくXP(エクストリーム・プログラミング)のプラクティスをしっかり学べるようです。
概要 | Abstract
認定スクラムプロダクトオーナーは研修のみで試験はありません。試験がないところが、認定スクラムマスターとの大きな違いのひとつです。
講師は認定スクラムトレーナー(CST)となっており、研修の受講を全うできなかったり、プロダクトオーナーとして不適格と判断されると認定を受けることができません。※認定基準は明らかになっておりません。
ただ、事前課題にしっかり取り組み、前向きに主体的に研修に取り組み、途中抜けせずに全うすればまず落ちることはないでしょう。
※同時に25名程度が受講しましたが、全員認定されているようです。
研修のカリキュラムはカスタマイズできるようで、Scrum Alliance Inc.(スクラムアライアンス)が規定しているものの他に、受講者が学びたいことを混ぜながら進みました。
研修自体がスクラムのようなやり方で、研修のゴール(ビジョン)が提示されて、カリキュラムがプロダクトバックログとなり、毎日優先順位を変えながら進んでいきます。
受講者は25名程度で4〜5名のチームが5つ作られて、ワークショップを挟みながら学びます。
スクラムの原理原則、プロダクトオーナーについての座学があって、より深く知ったり体験するためにワークショップが多く入っているようです。
研修では受講者の理解度に合わせて進行するため、分からないことを質問せずにいると、そのまま通りすぎてしまいます。
特に初学者は事前に勉強せずに来てしまうと、よくわからないまま終わってしまうかもしれません。
せめて、事前課題となっている下記はしっかりと学んでおきましょう。これらはプロダクトオーナーの役割を担う人にとっての最低限のマナーとも思えます。
- スクラムガイド(2020年版)
- アジャイル開発宣言、原則
- スクラム入門
その他に、トレーナーからの課題がいくつかメールで届きました。
そして、学べば学ぶほど深い疑問が湧いてきますので、それを遠慮なくたくさんトレーナーに質問しましょう。
効果的な質問をするとしっかりと回答してくださりますので、自分だけでなく、一緒に参加する他の受講者にとっても大変有益となります。
CSPOの研修はCSMと同様に認定スクラムトレーナー(CST)の人によって、やり方が全くと言って良いほどに異なるようです。そのため、他の認定スクラムトレーナーの人が本記事を読んだら、自分のものと全然違う、と思われるかもしれません。
また、一緒に参加するチームによってもかなり変わってきますので、ひとことに「CSPOの認定を受けました。」といっても、学びの種類や深さに大きな差があると言っていいでしょう。
研修の要素が下記とすると、
トレーナー ✖︎ チーム ✖︎ 自分
自分をコントロールすることがもっとも簡単なので、事前勉強をしっかり行うことと、研修に主体的に取り組むことが最も大事だと思います。
ちなみに、私の場合はCSMをMichael James(マイケル・ジェームズ、MJ)、CSPOをPeter Beck(ピーター・ベック)にトレーニングいただきまして、いずれも最高に良かったので、こちらのお二人は間違い無いです。
トレーナーは英語ですが、日本語に翻訳してくださる方がいますので、日本語しか理解できない方にも安心です。もちろん、英語と日本語は1対1ではありませんので、微妙なニュアンスを理解するためにも、英語が分かることに越したことはありません。
研修を申し込むときに日程とともに認定スクラムマスターも明らかになっておりますので、トレーナーを選ぶことができます。万が一、トレーナーが誰かもわからないような研修があったら避けたほうが良いでしょう。
認定スクラムプロダクトオーナー(CSPO)に対する感想
CSPOも最高の研修でした。安くない研修費用と研修時間を投資してくれた会社にとても感謝しております。
これまでスクラムやアジャイルの実践、CSMの認定、多くの書籍やサイトを通してスクラムを分かった気になっていました。しかしながら、プロダクトオーナーについての良い教材があまり見つからなかったこともあり、スクラムはプロダクトオーナーに厳しいフレームワークと認識していました。
そのように考えている中で、プロダクトオーナーはいかに振る舞えば良いか、プロダクトやチームに対してより良い影響を与えるプロダクトオーナーとは、ということを理解したく研修を受講することとしました。
結果としては、スクラムの原理原則を改めて理解することができ、その上でのプロダクトオーナーのやるべきこと、やらなくてもよいこと(他のスクラムチームのメンバーに任せる、協調すること)がクリアになったような気がします。
また、即席ですがチーム(4〜5名)で学び合うことで、新たな気づきも多くありました。これは想定していなかったメリットです。
完全体のスクラムでなくとも使える実践値もたくさん吸収できました。
今となっては、しっかりとしたトレーニングを受けていないプロダクトオーナーは無免許運転のようなもので、とても怖い存在のように思えます。
スクラムは経験主義にもとづいており、実験しながら学んで成長、改善していくものではあります。
しかしながら、先人の知恵を得ないで進めてしまうと、同じような多くの失敗をするという歴史が繰り返されます。
先人の知恵を得た上で、新たな実験、チャレンジを重ねて、多くの失敗から学びを得ていくことが進化なのだろう、と思いました。
守破離の「守」がたしかにありました。
感想:★★★★★
デメリットは高額な研修費用、研修の拘束時間、更新費用程度かと思います。
費用と時間に投資ができるのであれば、どうしても受けたい研修のひとつです。
プロダクトオーナー(Product Owner:PO)とは
プロダクトオーナーは、スクラムチームから生み出されるプロダクトの価値を最大化することの結果に責任を持つ。組織・スクラムチーム・個人によって、その方法はさまざまである。 プロダクトオーナーは、効果的なプロダクトバックログ管理にも責任を持つ。
スクラムガイド(2020)
認定スクラムプロダクトオーナー研修の対象者
下記のような人が対象になると考えています。
- プロダクトオーナーの実践者
- プロダクトオーナーの候補者
- スクラムマスター
- プロダクトオーナーの支援者
- 組織のマネージャー
あえて、スクラムマスターを候補に入れています。スクラムマスターは開発者、組織、そしてプロダクトオーナーを支援・コーチする役割となっています。プロダクトオーナーの役割や責任について深い理解がないと、支援・コーチもままなりませんので、スクラムマスターにとっても非常に有益な研修と考えています。
また、プロダクトオーナーはスクラムチームに一人しかおらず孤独になりがちです。そのステークホルダーとなる支援者や組織のマネージャーにプロダクトオーナーへの深い理解があると、かなり心強いでしょう。
研修、資格認定の費用
odd-e Japanの場合はオンライン開催で5日間×半日にて33万(税込)でした。
ちなみに研修を受けられる会社は複数あり、ググってみると22万(税込)のところもあります。
評判はodd-eが一番良いようですが、費用を抑えたい場合は他の会社を受けてみる手もあるかもしれません。
オンライントレーニングのメリット
私が受けたオンライン研修は、午後のみ(14:00-18:30)で5日間連続でした。
オンサイトのリアルな研修のときは3日間で終日だったようです。
「 半日 ✖︎ 5日間 」というのはとても良かったです。特に下記のメリットがありました。
- 仕事に大きな穴を開けることがない
- 研修での気づきを同僚と話したり、即実行したりできる
- スクラムやプロダクオーナーについての聞きたいことを聞くチャンスが5日間もある
特に仕事の穴を開けなくて済むことがとても助かりました。
午前中にしっかりお仕事をして、お昼を挟んで研修にどっぷり集中し、研修が終わったら少しお仕事のフォローをする、というサイクルできました。
毎日ではありませんでしたが、すこし宿題が出ますので、それに取り組みながら、いろいろとアジャイルやスクラムやプロダクトオーナーに思いを馳せる時間も私には貴重でした。そんな中で沸いた疑問などは、翌日の研修の始まりのタイミングでトレーナーに質問することができます。
私の場合は仕事もフルリモートなので、研修の合間の休憩(20分間)でもメールやSlackで同僚とやりとりすることができました。
この研修を受講するのはプロダクトオーナーを実践されている方や、その候補、もしくは支援するような立場の人が多いかと思いますので、きっと忙しい人ばかりです。
オンサイトだったら移動時間のオーバーヘッドが大きいですが、オンラインだからこそ効果的なのかもしれません。
ちなみに、今回の認定スクラムトレーナーはドイツの方で、日本のお昼はドイツではちょうど朝のようです。
ドイツの講師の立場からすると、午前中に研修を実施し、午後から通常のお仕事(プロダクトオーナー)ができているようで、うまくできてるなあと思いました。
一方で、3日間連続では研修に集中できるというメリットがありますね。ただ、ずっとインプットが続きますので、研修期間中にアウトプットする時間が取れにくい、あっという間にすぎてもっとこういう質問がしたかった、となることもあるかもしれません。
オンラインのトレーニングではZoomとmiroを常時使いますので、事前にツールに慣れておくとよいでしょう。
プロダクトオーナーへの道|PO The Way
CSPOを受けることで最低限のスクラムとプロダクトオーナーに必要な知識を得ることができます。
しかし、グレイトなプロダクトオーナーへの道は険しいと思い、プロダクトオーナー向けの良書はないかと尋ねました。すると、
プロダクトオーナーはスクラムを深く学ぶより、ビジネスを深く学んだ方がいい。
Peter Beck
と、想像を超える回答であったとともに、ぐうの音も出ないほど納得しました。
それでも、例えばということで、リーン・スタートアップの本をおすすめとのことでした。
また、認定スクラムプロダクトオーナーの上位資格を目指すのも良いとのことで、もっと実践経験を積んでからアドバンスド認定スクラムマスター:A-CSM℠を受けてみようと思ったのでした。
スクラムマスター向けにはSCRUMMASTER THE BOOKがオススメです。
今回は研修の内容を主体としましたが、認定プロダクトオーナーの学びは別記事にしようと思います。