【書籍】プロダクトマネジメントのすべて|世界水準のPMの英知はこの1冊で完璧に得られる|書評
アジャイル開発やスクラムを取り入れるだけでは価値あるプロダクトにはならないと思い、アジャイルの外側に興味を持ち始めて手にとってみたのが本書です。
「プロダクト」や「プロダクトマネジメント」という言葉が日本で流行りだしたのはここ数年かと思います。
それまでは「システム」や「システム開発」の方が主流でした。
どうしても「システム開発のプロジェクト」と捉えると、作ること、アウトプットすることが目的となってしまいがちです。これは「ビルドトラップ」と言われています。
そして、苦労してつくったものが使われなかったり、想定していた期待どおりの結果とならないことが多いです。
そこで「アジャイル」を魔法の杖や銀の弾丸のように思い込んで取り入れてみたものの、ビジネスとして良い効果がなかったということはあるあるです。
ビジョンや組織のミッション、顧客のニーズ、プロダクト、プロダクトの作り手とステークホルダー。
この全てを繋ぎ、学習と成長をし続けることはできないものかと日々考えています。
「プロダクトマネジメントのすべて」という本には多くの答えがあります。
Amazonレビュー|書評
こちらは私がAmazonに投稿したレビューです。
※Amazonで購入したアカウントでレビューを書いたのに「Amazonで購入」のラベルがつかなかったのは謎です。
国産でこれほどレベルの高い本が出たことが驚きであり、嬉しくもありました。
初めて手にした時、目次のタイトルと範囲、順番が秀逸でした。
(目次を読むだけでワクワクしました。)
プロダクトマネジメントの全体像を順を追って理解できるように組まれています。
これは翻訳本にはあまり見られない、国産だからこその丁寧さがあるように思えます。
内容は3cmほどの厚みがありますが、簡潔な文章で書かれているためサクサク読めます。
本書のポジショニングが「初学者向け×広い知識」となっております。
地球ぐらい広いように思えるプロダクトマネジメントの世界の歩き方を初学者に対しても丁寧にエッセンシャルな一歩をレクチャーしてくれます。
「初学者」感でいいますと、ある程度はプロダクト開発に携わったことがあり、もっと良いプロダクトを作りたいという人向けかと思います。
プロダクト開発で当たり前とされている用語は特に解説されておりませんので、本当の初心者には厳しいと思います。
(プロダクトって何ですか?レベルの人にはすこし早いです。)
一方で、広大なプロダクトマネジメントにおけるすべての領域を高いレベルで習得している人はほんの一握りかと思いますので、中級〜上級者にも多くの学びを得られる内容となっています。
また、プロダクトマネージャーの役割とされることがたくさんたくさん出てきます。
しかしながら、一人の人間で出来る質と量には限界があります。不可能です。
そのため、チーム(プロダクトチーム)が必要になると考えています。
ぜひ、プロダクトマネージャーやそれを目指す人だけでなく、プロダクト開発に関わるすべての人に本書を手にとっていただき、チーム全体でプロダクトマネジメントがうまくまわるようなになれば、と思いました。
Amazon レビュー
プロダクトマネジメントのすべて|本
よく考えるとすごいタイトルです。
膨大な領域のプロダクトマネジメントの世界を「すべて」としまうところが。
一見すると、「一冊におさまるわけがない」という意見も出てきそうです。
しかしながら、「すべて」加減でいうと、あながち嘘ではないと思います。
特に「目次」が秀逸です。
プロダクトのど真ん中の領域に加えて、関連する周りの領域もくまなく網羅しており、この本を起点に学んでいけば「すべて」を理解することができそうです。
プロダクト開発を実践している人の多くは、自分の得意とした領域から広げようとしがちです。そうすると、それ以外の重要な領域が軽視されたり、おざなりになったり、気づかない、ということになります。
だいたいそういうところに落とし穴があり失敗します。
失敗から学べば良い、ということはある意味正しいですが、避けられる穴は避けておいた方が、プロダクトの成功確率、成功速度は飛躍的に上がります。
本書はプロダクトマネジメントの世界の視野と視座を一気に広げてくれる役割を担ってくれています。
そういった意味で「すべて」は納得です。
世界水準のPMの英知はこの1冊で完璧に得られる
「完璧に得られる」はさすがに盛りすぎかと思います。
どなたがこのキャッチコピーを思い付いたのか不明ですが、きっと中の人たちでも賛否両論あったでしょう。笑
ただ、このキャッチコピーがあることによって売り上げの部数は確実に上がっていると思います。
私なら、
「この1冊は、世界水準のPMの英知を完璧に得るトリガーになる。」
というメッセージを帯にします。笑
そして、本書をプロダクトとみなしたマーケティングも相当レベルが高いのだろうと感じます。
プロダクトマネジメントとプロジェクトマネジメントの違い
プロダクトマネジメント(Product Management)とプロジェクトマネジメント(Project Management)は名称も似ており、略称もともに「PM」であることから、対比されたり混同されることがあります。
本書でもプロダクトとプロジェクトの違いが図表付きで解説されています。
簡単に言うと、プロダクトのライフサイクルをマネジメントする期限のないものがプロダクトマネジメント、プロダクトのライフサイクルの中で一定期間を区切っているものがプロジェクト、と捉えています。
プロジェクト思考だけになってしまうと、プロダクトをつくることが目的になってしまい、作ったら終わり、という意識になってしまいがちです。それだと、せっかく作っても使われなかったり、動かなかったり、狙った成果が出ないということになりかねません。
もっと、中期的な視点でプロダクトが本当の価値を出すように作り込み続ける必要があります。
一方で、プロジェクトはプロダクトの一部ですので、プロジェクトをおざなりにしてしまうとボロボロになることがあります。
プロダクトかぶれ、アジャイルかぶれになって中途半端に理解した気になって、これまで大事にしてきたことを捨て去って、新しい世界が正しいと信じて進んでしまうと足元をすくわれます。
プロダクト思考に移行していくことが正しいと私も思っていますが、地に足をつけながら、成功の戦略と戦術を持ってプロダクト開発をしていくことが大事だと思います。
本の中身は恐ろしく濃い
初学者向けで浅く広く、と聞くと内容が薄っぺらい気がしてきます。
しかし、中身は恐ろしく濃くなっています。
数字で表現しますと、100ぐらいの英知を5ぐらいに凝縮して、初学者に伝わる表現に変えた、といったものになっています。
私もプロダクトマネジメントの全貌がまだ見えておりませんが、自分が得意だと思っている領域については、本質的なところ、よくあるアンチパターンをしっかり避けるように記載されており驚きました。
及川卓也さん|曽根原春樹さん|小城久美子さん|Tably株式会社(テーブリー株式会社)
著者の「及川卓也さん」「曽根原春樹さん」「小城久美子さん」はそれぞれプロダクトマネジメント界隈では有名な方ですね。
御三方ともにTably株式会社で及川卓也さんは代表です。
「謝辞」のページで本書にフィードバックされた方々のお名前が載っておりますが、こちらもプロダクトマネジメント、UX、アジャイル、スクラムといった領域のスペシャリストばかりになっています。
これだけの人たちとのネットワーキングも恐れ入ります。
現時点の国産本の中で最高峰ではないでしょうか。
目次|プロダクトマネジメントのすべて
1.プロダクトの成功とは
2.プロダクトマネージャーの役割
3.プロダクトマネージャーの仕事とスキルの全体像
4.プロダクトの4階層
5.プロダクトのCore
6.プロダクトのWhy
7.プロダクトのWhat
8.プロダクトのHow
9.プロダクトマネージャーを取り巻くチーム
10.チームとステークホルダーを率いる
11.チームでプロダクトをつくるためのテクニック
12.プロダクトステージによるふるまい方の違い
13.ビジネス形態によるふるまい方の違い
14.未知のビジネスドメインに挑む
15.技術要素の違いによるふるまい方の違い
16.プロダクトマネジメントと組織
17.プロダクトマネージャーのスキルの伸ばし方
18.プロダクトマネージャーのキャリア
19.ビジネスの基礎知識
20.UXの基礎知識
21.テクノロジーの基礎知識
本当はこれの1段階、2段階深い階層の目次があります。
ただ、膨大であることに加えて、目次自体にものすごいノウハウが詰め込まれているため、著作権の侵害を避けたく詳細は省略します。
リアル書店に立ち寄れる方はパラパラと目次を眺めるのも楽しいと思います!
本書の最大の意義
本書の最大の意義は、プロダクトマネジメントのすべての領域を同じ文脈で一冊にまとめた、ところにあります。
ひとつひとつのテーマはどこかで聞いたことがあるような、どこかの書籍に載っているような、どこかのウェビナーで見たことがあるような内容が多いかもしれません。
しかしながら、時系列も著者・発表者もバラバラなものを全て集めて理解することは並大抵ではできません。
それをコンパクトに「ポン」とまとめてくださっていることが秀逸です。
プロダクトマネジメントは、アジャイルもそうですが、ひとによって言うことが変わりますので、結局何なのかを捉えることがとても難しいです。それこそ、実践を重ねて、経験的に学習していくことが必要となります。
それを共通理解として全網羅しているところに価値があります。
これをプロダクトマネージャーだけでなく、プロダクトを開発する人、デリバリーする人、マーケティングする人、さまざまなステークホルダーのみなさまに読んでいただけると、プロダクトの方向性が一気にまとまる可能性を秘めています。
本書ではプロダクトマネージャーの役割が膨大になっています。
しかし、ひとりの人間にできることは限られています。どんなにスーパーマンでも。
そこで最重要となる概念が「チーム」です。
ぜひ、プロダクトチームのひとりひとりがプロダクトマネジメントを理解くださればと思います。
プロダクトマネジメントクライテリア
本書の読者特典として「プロジェクトマネジメントクライテリア」をダウンロードできるようになっています。
プロジェクトマネジメントクライテリアとは、企業がプロダクトを成功に導くために必要な要素を多面的かつ具体的に、チェックリストの形式で記載したものです。
こちらは本を購入していれば無償でダウンロード可能になりますが、これだけでも本書の価格以上の価値があるかもしれません。
教科書|新人研修|若手育成|チームの輪読会で活用
プロダクトマネジメントを幅広く、わかりやすい言葉で綴られているため教科書的に使うこともできます。
そのため、新人研修、若手育成、チームの輪読会などでも活用できるでしょう。
そういえばと、10年くらい前に分厚いPMBOK(第4版)を読んでPMPを取得したことを思い出しました。
書かれていることは良いこと、正しいことが多く、プロジェクトマネジメントとしての内容もかなり広範囲で網羅的でした。しかし、これをプロジェクトマネージャーだけが理解しても適用するのが難しい、という感想でした。若干、アメリカ的でしたし。
毎日忙しいプロジェクトの中でPMBOKの知識体系や用語をメンバーに伝え、理解いただくことは難しく、その中のエッセンスだけを自然に取り入れるということをやっていました。
本書の言葉や視野や視座が「共通言語」になると強力です。
もっと欲を言うと・・・
現時点で最高の本かと思います。
しかしながら、プロダクトマネジメント界隈の変化はかなり早く激しく、著者やフィードバックをされた方々の学習速度も相当速いと思います。
プロダクトマネジメントの本質的なところはそうそう変わらないにしても、具体例や適用の仕方はどんどん新しいものがでてきます。
毎年は難しくとも、隔年ぐらいのペースで本書をアップデートしてくださると嬉しいです。
「本」というハードウェアはどうしても適応が難しいですね。ソフトウェアではないですから。
例えば、「本」の購入者は一定期間、「本のWeb版」みたいな随時更新されるソフトウェアから最新の英知を得られる、みたいなものができたらいいな、と思いました。
いっそのこと、「プロダクトマネジメント アプリ」みたいなプロダクトをつくってサブスクリプションにしてもらえたら、買いたくなります。笑
小城久美子 / ozyozyo|note|Twitter
共著者のひとりの「小城久美子さん」はプロダクトマネジメント界隈の情報を積極的に発信してくださっています。
noteやTwitterなどをフォローしておくと、最新のアップデートされていく情報をキャッチできるかもしれません。
#プロすべ
「プロダクトマネジメントのすべて」は文字数が長いということで、正式な略称が「プロすべ」とのことです。
「プロすべ」だけを見てもピンときませんが、いつか、逃げるは恥だが役に立つの「逃げ恥」のように、誰が聞いてもアレだと分かる4文字になるといいですね。この界隈で。