【書籍】チームジャーニーを読み終えて|レビュー|アジャイル開発の現場におくる
「チーム・ジャーニー 逆境を越える、変化に強いチームをつくるまで」を読み終えての気づきをご紹介します。本書は「アジャイル開発」を舞台にチームをいかに成長させるかについて丁寧に描写されています。
- 作品:チーム・ジャーニー 逆境を越える、変化に強いチームをつくりあげるまで
- 出版社: 翔泳社 (2020/2/17)
- 著者:市谷 聡啓
- ISBN-10:4798163635
チームジャーニー 逆境を越える、変化に強いチームをつくりあげるまで |評価
グループをチームにするためのリアルな課題とアイデアが随所に練り込まれている。
ストーリー形式でチームが成長する過程が描かれており、章ごとに解説があるため感覚的な理解と腹落ちを繰り返しながら読み進めることができる。
最初から通して読み、ジャーニーを理解したのちに、それぞれの読者の現場に近い章を深く読み込めることができれば、アイデアを実践できるようになるだろう。
特に『アジャイル開発』、手法のひとつとして『スクラム』を実践している、もしくは実践しようとしている人には間違いなくオススメです。
評価:★★★★★(最高)
チームジャーニー著者 市谷 聡啓 さん
市谷さんを私からご紹介するのは恐れ多いため、下記の各種サイトをご覧ください。
市谷聡啓 / Toshihiro Ichitani 公式サイト | https://ichitani.com/ |
ギルドワークス株式会社 ギルドワークス代表 | https://guildworks.jp/member/1.html |
市谷 聡啓について:CodeZine(コードジン) | https://codezine.jp/author/1812 |
DevLOVE|開発を愛する人たちのコミュニティ | https://devlove.link/ |
チームジャーニーの目次
第1部|僕らが開発チームになるまで – 1チームのジャーニー
- 単一チーム|基本編
- 第 01 話|グループでしかないチーム
- 第 02 話|一人ひとりに向き合う
- 第 03 話|少しずつチームになる
- 第 04 話|チームのファーストを変える
- 単一チーム|応用編
- 第 05 話|チームをアップデートする
- 第 06 話|分散チームへの適応
- 第 07 話|チームの共通理解を深める
- 第 08 話|一人の人間のようなチーム
第2部|僕らがプロダクトチームになるまで – 複数チームのジャーニー
- 複数チーム|基本編
- 第 09 話|塹壕の中のプロダクトチーム
- 第 10 話|チーム同士で向き合う
- 第 11 話|チームの間の境界を正す
- 第 12 話|チームの境界を越えてチームをつくる
- 複数チーム|応用編
- 第 13 話|チームとチームをつなげる
- 第 14 話|クモからヒトデに移行するチーム
- 第 15 話|ミッションを越境するチーム
- 第 16 話|ともに考え、ともにつくるチーム
チームジャーニーの読了後
この物語を経て、様々な苦難を乗り越えた先のチームの姿を愛らしく感じる。
自分がこのチームの一員であったら、何を感じてどう行動するかを考えながら読み進めると、さらにリアリティを感じることができる。
自分たちの周りに起こっている様々な課題や問題が言語化されており、よく起こるものとして共感できている。
あるチームの話しとして、初期段階から、変化に強い複数チームまで成長段階をジャーニーとして体験できる。
チームを成長させるにあたって、一歩先、二歩先までイメージすることができる。
タフな問いを中心に、自らに対して危機感を覚え、一歩を踏み出す勇気が出る、もしくは、厳しいと感じてしまう。
他者がいて自分がいる、という考え方を得ることができる。
変化に強いチームをつくりたくなる、チームの一員になりたくなる。
チームジャーニーの対象の読者|アジャイル開発とスクラム
チームの初期段階から複数の変化に強いチームまで網羅しているため、かなりの読者層をカバーしている。
あらゆる業態、現場で活かせるエッセンスがある。ただ、本書の舞台が「アジャイル開発」であり、手法として「スクラム」を取り入れているため、これらにある程度の知識があると、理解しやすい。
もちろん、開発チームの全員に読んで欲しいが、特にリーダー層、マネージャー層、またはそれに準じる方に特に読んで広めていただきたい。
チームをこれから立ち上げる、チームを任されることになった、チーム運営がうまくいかない、といった課題感を持っている方には深く刺さる内容となっている。
チームジャーニーの名言を2つご紹介
自分はなぜここにいるのか?
チーム・ジャーニー
この問いに対して何も考えていないときに聞かれるとキツイと思います。
でも、これを考え、自分の中で答えを見つけることができたなら、今の仕事に対してもっと前向きに、スッキリとした気持ちで取り組めるかもしれません。
そして、これをチームに共有し、チームとして「私たちはなぜここにいるのか?」という問いに繋げることができたら、きっとそこは自己実現の場になります。
リーダーは人に張り付いた職務のこと。リードは、チームフォーメーション上の役割のこと。後者は、適宜変えることでチームとして状況に対処できるようにしていきたい。
チーム・ジャーニー
みなさんは「リーダー」という言葉にどんなイメージがありますでしょうか。
急に「このリーダーをやってください!」「◯◯担当をやってもらえませんか?」と依頼されたらみなさんどのような気持ちになりますでしょうか。
それがやりたいものであったら何も問題ありませんね。
ただ、前向きではないものの、誰かがやらないといけないものだったらどうでしょうか。
一時的にやるのは構わないけどずっとは嫌だな、責任が増えるのは嫌だな、と思うかもしれません。
それに対して、「この状況なのでリード役をお願いしたいです。あなたのタスクにするのではなく、メンバーを巻き込んでリード(推進)する役割です。状況に応じてリード役の見直しを行います」と依頼されたらだいぶ印象が変わるかと思います。
チームジャーニーを読んでの気づき
チームとグループの違い
これまで、チームとグループという言葉をいかに曖昧に使ってきたかを気付かされます。
本書では表形式で明確に記載されておりますので、ぜひご覧ください。
『グループ』を辞書で引くと下記となっています。
共通の性質で分類した、人や物の一団。群。
goo辞書
『チーム』を辞書で引くと下記となっています。
ある目的のために協力して行動するグループ。
goo辞書
上記のように、チームとグループは相反するものではなく、グループの中にチームが概念として入ります。
もっと言いますと、グループの上位概念としてチームがあると捉えています。
ひと言で表現するとこちらとなります。
共通の目標を持ち、それに向かって相互に支援し合うグループのことを、チームと呼ぶ。
この『チーム』と『グループ』の違いは、『磨く』と『こする』の関係に似ていると思いました。
どちらも「こする」という行為は同じですが、そこに「綺麗にする」という目的が加わることで「磨く」になります。
同様の式を「チーム」にあてはめてみると下記になります。
チーム = グループ + 共通の目標に向かって相互に支援し合う(目的)
本書ではまだグループでしかないならチームを目指そうとなっておりますが、グループにもなっていないとしたら、まずはグループになることから始めることになります。
段階(ジャーニー)
『段階』という概念に衝撃を受けました。
これまでアジャイル開発に関する書籍を読んだり、研修を受けるなどして、頭ではアジャイルの本質を理解したつもりでいます。
ただ、理解したことをひとに説明しても、下記のようや反応を受けることが多くあります。
- 現実的に自分たちには難しい…
- なに理想ばかり言ってるの?
- 本当にうまくいくの?
これらの反応を聞いて、リスク取らないと何も変わらないのにと思うこともありました。
しかし、本書を読むことで、変化量が大きすぎることから起きている当たり前の現象なのだと気づきました。
例えば、『崖を越えて!』と急に依頼しても誰しもが躊躇しますが、『まず準備運動をしよう!』であれば素直に受け入れられるかもしれません。
もちろん、ありたい姿を伝えることは必要ですが、それとセットで現実的で変化量の小さい一歩から始められると、いずれは大きな一歩を越えられるでしょう。
チームジャーニーのレビューのまとめ
本書はデブサミ2020の『チーム・ジャーニー』の講演を聴き、今まさに自分に必要な内容だと思い、先行発売の書籍コーナーへ足早に行き、手に入れたものです。
仕事で必要な書籍であれば会社に申請することができますが、いち早く読みたかったんです。結果、ゲットして正解で、チーム立ち上げのプランを練ることができました。
運命を感じるほどのタイミングの良さ。
一人でも多くの方に本書を手にとっていただき、ひとつでも多くのチームが生まれ、成長されていくことを願っています。