アジャイルソフトウェア開発宣言はアジャイルの価値観(マインドセット)を表しているものの、解釈が難しい表現となっているため、多くの誤解を生んでいます。
その読み解き方を以前の記事にて細かく書いていますが、やはり、同じような課題感を持つ方がいらっしゃいますので、そのご紹介です。
こちら、英語版のみで日本語訳版を見つけられなかったのですが『Agile Development with ICONIX Process: People, Process, and Pragmatism』という書籍です。

その中でアジャイル宣言における4つの価値観を下記のようにリファクタリング(書き換え)しています。
To get individuals interacting effectively, you need flexible processes and tools.
To communicate unambiguously, you need minimal but sufficient documentation.
To gain customer collaboration, you need to negotiate a contract first.
To know when to change and to recognize that you are changing, you need a plan.
Agile Development with ICONIX Process
Google先生に頼った日本語翻訳は下記となります。
- 個人が効果的に対話できるようにするには、柔軟なプロセスとツールが必要です。
- 明確なコミュニケーションをとるには、最小限で十分なドキュメントが必要です。
- 顧客とのコラボレーションを実現するには、まず契約を交渉する必要があります。
- いつ変更するかを知り、あなたが変化していることを認識するには、計画が必要です。
アジャイル宣言の文面だけで判断すると、左側の価値観(プロセス、ドキュメント、契約交渉、計画)が軽視されがちになりますが、上記の場合は明確にそれらが必要だと分かります。
ただ、上記の内容は書籍の中で述べられているように、リファクタリングの域をすこし超えています(目的が置き換わっている)。そのため、元のアジャイル宣言と合わせた理解が必要だと主張されています。
恐らく、ウォーターフォール開発の世界を経験されている方は、上記のリファクタリング版の方が腹落ちしやすいのではないでしょうか。
アジャイル開発はドキュメント作らないって本当?
アジリティを出すために効果的なプロセスやツールってたくさんあるよね?
アジャイル開発にするための契約って必要だよね?
計画も見通しも立たないってありなの?
という疑問はもっともなのです。
プロダクト(ソフトウェア)を作って世に出すために、やること(やるべきこと)自体はウォーターフォール開発でもアジャイル開発でも同じです。
より目的を重視し、本質的に大事なことに対してフォーカスする、やり方を変える、ムダや効果の薄いことを省く、リスクを回避しながら進める、ということです。
アジャイル開発だから、という理由で本当にしなければならないことをおざなりにするケースがあります。それは、もちろんうまくいきません。
どちらの手法も最終的にユーザーにプロダクト(ソフトウェア)を届けるプロジェクトであり、ユーザーにとっては裏でどのように作られているかは関係なく、対価を支払う価値があるかものであるかどうかでしかないのです。
ちなみに、実は、アジャイル宣言を正しく理解するための文書をIPAが公開しています。
こちらは公的な機関が発行しているため一定の信用があります。私のブログよりも断然あります。
ただ、IPAが発行しているから、と鵜呑みにするのではなく自ら考えて理解し、実践し、カイゼンを続けていくことこそがアジャイルであると考えています。
価値観や原則はそうそう変わらないはずですが、解釈は人によっても時代によっても変わるかもしれませんから。
